『材木の話』
もちろん日本建築にとっては木は切り離すことが出来ない材料であるの当たり前なのだが、当たり前過ぎてその素材の重要性が忘れられているような気がする。近年では新建材や輸入材木の普及により機械的に材木を扱っているケースが多々観られるが、材木の奥は深い。
材木「木」は生きている。生物であるわけだから気候・風土等の成長環境や、材木にするための伐採時期(切り旬)、また材木にするための製材における使用部位など様々な要素が個々によって違う。このことを無視して木を材木にすることはできない。
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例えば、木の幹を太くする成長時期は春から初秋であるが、その期間でも前半の時期を「春材」「早材」と呼び組織は大きく、色も薄い。後半の時期は「夏材」「晩材」と呼び組織は小さく、色は濃い。その変化が年輪となる。
そして「切り旬」と言われる木の伐採の最適時期は、この成長期の後の秋から冬にかけてである。
ただし、すべての木の切り旬が同じな訳ではなく、数寄屋建築には欠かせない磨き丸太や化粧材などは、表面の樹皮を剥離しないといけないので、剥離しやすい春が切り旬になる。
『道具の話』
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切り旬を迎え、伐採された原木は「生材」と呼ばれ、水分が多く含まれているために重く、腐りやすい。当然そのままでは水分が乾燥していく過程で変形し、強度も不安定になる。よって材木に使用する木は伐採後の乾燥も重要になる。
この乾燥には「人工乾燥」と「天然乾燥」があるが、木は生き物なのであるから「天然乾燥」が好ましい。 天然乾燥では、風通しの良い屋根の下に、桟積みして置き、自然力だけで乾燥させる。もちろん自然の力を使うのであるから、長い時間もかかり、すぐに製材もできないため不経済ではあるが、その仕上がりは人工乾燥より素晴らしい。この乾燥を経てはじめて製材ができる。 |
『材木商としてのこだわり』
木は生きている。木を知らずして材木は商えない。
現代では電動工具の発達により木の製材は機械的な作業になり、木を知らずとも木材が扱えるようになったが、以前は「木挽き職人」と呼ばれる木を知る技術・技能者が一本一本の木の個性を見極めて製材をしていた。
岸本木材では山々を見て、木を知り原木を見極め、吟味した材料を木を知る大工に提供し、雅な建築を後世に伝えたい。
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