『寸法へのこだわり』
数寄屋建築・お茶室を創るのに、いや日本建築を語るのに、切っても切れない物の一つが「畳」です。
日本では古くからアシ・カヤ・イグサ等の植物で作られた「むしろ」が使われており、上質な素材だった「イ草」は大変好まれていたようでした。「ござ」は「御座」のことで、その上質さから神を迎える敷物を指していたようです。 |
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畳を作る上でとても重要な事は寸法です。特にお茶室の畳には、それぞれに役割があり、畳の目が大変重要になります。(道具を置くときに畳の目数を目安とします。)
現在では機械化が進み、畳の短手の目は縁内63.5目で、縁際の一方が丸目であれば反対側は半目になります。(畳表の目の幅の一部が畳縁の下に隠れたものを「半目」または「小切目」、全部現れているものを「丸目」または「大切目」と呼んでいます。)
本来の手織りの畳みは縁内64目で、私はお茶室用の畳として独自の技法により、縁内64目にこだわって作っています。
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お茶室の畳に僅かでも誤差があれば、炉畳にも影響します。さらに、この炉畳と言うのはお茶室の畳の中でも一番高度な技術が求められます。
僅か数ミリのイ草を少しずつ切り落としていき、微妙な成形をしていきます。
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『縁の話』
畳の仕様は古から、身分や階級によって規定されていました。その格を表すのは「縁」です。
錦織の「繧繝縁」は、みなさんの身近なところではひな人形の男雛・女雛の台座の縁を思い浮かべていただくとよいかもしれません。
また白と黒の「高麗縁」は紋の大きさで部屋の格を表しており、畳をひいた時に、隣り合う畳の紋と紋の文様がぴったりと合うようにつけなければなりません。
麻織物を藍染めの濃紺にした物や、柿渋と藍を反応させて黒色にした「高宮縁」はお茶室に好んで使われています。
『幻の畳』
藤本畳店では創業以来、伝統的な材料と仕立てにこだわり続けています。
「丸目」にこだわった縁内64目の仕上げはもとより、「幻の畳」と言われる手織中継ぎ表を用いた「四つ割り仕立て」を復活させました。
直に茶碗を置いてお茶を頂くのも「畳」であれば抵抗はなく、多くの日本文化にとって「畳」は欠くことができません。とりわけ「京畳」の持つ重要性は茶道をはじめとする日本文化の中で現在にいたるまで脈々と受け継がれています。
日本の気候風土にあった最良の床材は「畳」であり、その香りと色合い、そしてその肌触りの心地よさは、"癒し"そのものであります。藤本畳店では材料の吟味、技術の修練を重ね"本物"の畳を作り続け、畳を通じて日本の「癒し」を伝えたいと願っております。 |
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